+迷い子+










その日。
彼らは都内某所に集合していた。
しかし・・・



「一人足りなくないか?」
「あ・・・」
「そういえば・・・」



千波流の言葉に年少組の二人が辺りをきょろきょろと見回す。
傍で話を聞いていた伊織は小さく溜息を付き、
その傍にいた夜紫乃は苦笑する。


「珍しい人がいないね」
「まっさか迷ってんのかな〜?」


「迷う」という言葉に小さく笑ったのはお頭だ。
珍しいこともあるものだなと、とても楽しそうに笑う。
その傍では笑っては失礼だよと佐久弥が小さく囁いているのが見える。


「まさかアレに限ってそれはないだろう」


そう言ったのは亜夏刃だ。
隣でうんうんと頷いているのは睦月。



「それに、気づいてたら直ぐに連絡して来るはずですよ」
「わっかんねーぞ、アイツの事だし」


恥ずかしがって電話するのも躊躇いそうだ。
可笑しそうに笑ってそれらの言葉を遮る様に言ったのは寿々加だ。
確かにそうかもしれないと笑うのは羽霧と珠菜の二人。



多分…当たっているのは後者だろうな。
それに口元に笑みを浮かべるのは我一人だけ。


「お頭、どうする?」


楽しそうに尋ねたそれにお頭は小さく頷く。
こちらから掛けてやろうか。
どうせ今頃一人でむっとした顔で突っ立ってそうだしな。


「では我が…」


クスッと笑って手に持った携帯に気づいて
佐久弥がひょっこりと画面を覗き込む。



「あれ・・・番号知ってるの各務?」



我はもちろんとばかりに口元に笑みを浮かべる。
それに答えたのは我ではなく、お頭だった。



「アイツにそれを持たせたのは各務だからな」
「え!?」
「ふっ・・・・持たせておかないと絶対に迷うであろ?比奈伎は」



そう画面に映った名前は、比奈伎の三文字。



「何?各務アイツの番号知ってんの?」
「うそー、私には教えてくれなかった癖にー!」



次々に覗き込む中で当の比奈伎はと言うと…
電話越しに


「もしもし比奈伎?皆待っておるぞ?」
「・・・・ま」
「ま?」
「迷った・・・此処は何処だ」
「・・・・」



笑いを堪えてやはり迷っておったよと皆に目配せすれば
周りに居た全員が必死で笑いを堪える姿。
携帯を耳元から離して



「お頭、比奈伎はやはり迷っておったようだよ」


笑ってそう言えば、お頭がこれでもかという程に抑えもせずに
大笑いで笑うものだから全員がそれにつられた笑い出す始末。

携帯の向こうの比奈伎がバラすな!そこ!と
恥ずかしそうに怒鳴ってる声が聞こえた。



「すまぬな」


そういう我も笑いを堪えていうものだから、
比奈伎が電話越しに黙ってしまった。

多分向こう側では必死に唇噛み締めて地団駄踏んでいるのだろう。


「ふふっ、比奈伎、今何処かえ?」
「・・・改札口」
「じゃぁ我が迎えに行ってあげようか?」
「・・・」



それから暫くして携帯を切った後。
なんだって?なんだって?と皆が返事がどうだったかを聞いてくる。



「・・・我一人に迎えに来て欲しいとさ」



クスッと小さく笑って我は皆に答える。
皆に迎えられるのはやはり、恥ずかしいらしいよ。



「何処にいるって?比奈伎は」



お頭の尋ねてきたそれに我は笑って答えた。



「南口だとさ」



それに佐久弥が逆だね、待ち合わせ場所とと笑い
確かに反対に出たら確かに迷いやすいかもなと
お頭も再度可笑しそうに笑った。



「それでは行って来るよ」



皆そこでお茶でもしつつ待ってておくれ。
我は手を振ってその場を後にする。
きっと今頃は猫の様にうずくまって待っているであろう比奈伎の元へと
笑いを堪えながら我は足早に向かった。



【数分後、メール送信】


【比奈伎、今行くから飲み物でも買って座って待ってるんだよ】



【数秒後(笑)メール受信】


【いわれんでも待ってるから早く来い!!(怒)】





「…おやおや、えらくご立腹だねぇ」



我はそんなメールを見ながら、ちら、と少し遠くの人物を見つめる。
それは苛々と受信したそれを見て地団駄踏んでいる比奈伎の姿。



【メール送信】

【比奈伎や、なんだか後姿が可愛いよ?(クス)】



メールを受信したのか、ハッと気づいてキョロキョロと比奈伎が辺りを見回す。
でも残念。
我は今、柱の影に隠れているから姿は見えないのだよ。



「ふふっ、…さて少しだけアレと遊んだら迎えに行ってやるかねぇ」



その後、散々遊んだ後。
比奈伎が涙目で皆の元に向かう羽目になったのは言うまでもない。



(やれやれ…、まだまだあの子もツメが甘いねえ…)















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