+田舎版鬼神楽+




3.


「あぁ?お頭?」
「何処にいるか分かるか?」
「んだば川の方にいくといっとったべ?」
「んだんだ」



…
もはや言動については何も触れまい。
珠菜も羽霧もその手の仲間に入ってしまったとは…
やはり我は一人なのかと思いつつも誰か一人は仲間が居て欲しい。
…と思う。いや思いたい。
川岸へ向かって歩いて行くと見知った小さな影とまたすれ違った。
今度は大丈夫だろうか?
…いや、今までが今までだったから信頼しない方がいい。
この世界は全てにおいて、間違っている!



「あ、各務」



しかし。
我を見つけた向こうがぱたぱたとこっちに掛けて来る。
睦月…何故見つけるのだ、我を。
しかも言葉の訛りが何処か違うぞ、お前も…ッ



「なんかしらねけど、皆が各務が今日は何処か可笑しいって笑ってたべ?
なんかおかしなモノでも食っただか?」
「…いや、別に何もおかしなモノは食べてないが…」
「あんれ〜?」



おっかしいだなぁ。聞き違えただか?
そう言って首を傾げる睦月に吹き出しそうになって思わず口元を抑える。
何なのだ、皆して…!
我を笑わせてそんなに楽しいのか。
ふるふると体を震わす我に睦月が少し訛った声で心配そうに声を掛ける。
嗚呼、心配に思うなら頼むから…
今声をかけてくれるでないよ、睦月!



「だ、だだだ、大丈夫だ。ももも…ッ…案ずるな」
「…?そうかぁ?」



我はその場を再び逃げる様にして去った。
後にはきょとんと首を傾げたままの睦月が残る。








川岸まで小走りに駆けて行くと、そこには伊織とお頭の姿があった。
もう誰もかれもが異国の言葉に思えてならない。
楽しそうに笑う声も何処か訛って聞こえる。



「各務…?」



こちらに気づいた様な声に振り返るとそこには笑顔で立つお頭の姿。
あぁ、お頭。
そこから先は言わないでおくれ。
けれど一歩後ずさった私の目の前でお頭は爽やかに微笑んで口を開く。


「どげんした?こんな所で、お前も川遊びにでもしにきただか?」
「お頭…」
「ん?」
「…そ、そそ、その言葉は何処で覚えたのだ?」
「此処で」




……ふっ
もう何も言うまいて。
そう思った瞬間視界が真っ白にぼやけた。







「各務―!?」


焦ったような。
慌てたような伊織の声に我は目を開く。
そこには彼女の他に、おろおろした表情でこっちを見る彩登や瀬比呂。
反対側には自分を見守るお頭の姿があった。


「…?」
「あ、起きた」
「良かったー」



急に倒れるからビックリしたよー。
彩登が涙を目にいっぱい溜めて言う隣で瀬比呂が小さく何度も頷いている。
…うん?普通に戻って……る?



「我は一体…」
「暑さで倒れたんだよ、で…川の上にバシャーンって!」
「その間妙な独り言も言ってたけどな」



そう言って笑うのはお頭。
独り言…?
はて、何を言ったのやら。
首を傾げる我の目の前で彩登や瀬比呂が実演して見せる。



「うんうん、何かおかしな喋り方してたよー」
「〜だべーとか、んだんだーとか」
「ぶっ…」
「…?各務どしたの?」
「い、い、今我にその話題を振らないでおくれ…ッ」



そこでようやっと気づく。
さっきまでの事が全て夢だったのだという事に。
だが、こちらを見るお頭は何処か楽しそうだ。
何かぽそぽそと口元で言っているのに気づいて目を凝らす。



「そげなこと…夢かどうかは、実際聞いてみないとわからねぇべさ?」



のぉ、各務?
夢の中で聞いた訛った声で言われた挙句、
小さく片目を瞑ってそう言ったお頭にトドメを指されてはもう駄目だった。
抑えていたモノが溢れ出し、その後盛大に吹き出した我に
周りは思わずぎょっとし、こみ上げてきた笑いは止まることを知らず、
それから延々数十分回りに響き渡った。



(い、田舎弁はもう勘弁…!)



おしまい(爆)




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