+眉間+






『それ』一つが無いだけで、こんなにも違うものだろうか。






「お前さァ…」


『少しは笑えば』、と言いかけて、やっぱりやめた。
こんな事言って、喜ぶやつじゃないモンな。

っていうか、むしろ嫌そうな顔をするに違いない。
あんまり冗談の通じるヤツじゃねえしなあ。


「何だ」


どうでも良さそうな声音でいて、実は本心から気にしている事を知っている。
意外と、…いや、見た目以上に勤勉なんだよな、コイツ。


興味の無い振りをしながらも、明らかに意識はこちらを向いている。


「いや、つまんねー事だから」


ひらひらと手を振りながら話をそらすと、案の定眉間にしわがよった。


「…そうか、なら良い」


おーおー、どこが『もう良い』って態度なんだ、それのどこが。


「気になるなら最後まで聞けば良いだろ?」
「もう良いって言っているだろう」
「ホントは気になるんだろ」
「うるさいぞ」


「比奈ァ」
「……何だ」


そこまで気にされると、わざと他の事を聞いてやりたくなる。


「お前…他のヤツと、俺の前と、態度が違わないか?」


そうだよな。
前から気づいてたけど、絶対違う。
少なくとも、俺以外の前ではコイツは、ちゃんと副頭領の顔をしてる。
受け答えだって、多少頑固な面が目立つが、それでも理にかなってるし
お頭に対してはともかくとしても、普段はきちんと大人の顔をしてる。

何で俺の前でだけ、そんなにガキなんだよ。

それって、差別じゃないか?
そんな気軽な気持ちでさらっと聞いたはずだったのに。


その言葉は、俺の思った以上に


「―――」


……思わず、口を開けてしまうほどに。


いやそこ、間違えるなよ。
口を開けたのは比奈伎じゃなくって、俺の方だ。
ていうか、俺が混乱してどうするよ。


いや、こりゃ混乱もするだろ、誰だってさ。


だって―――


「…ひ、比奈伎! もう一回!!」
「は?」
「いや、だから、もう一回―――」


だって、コイツ


「全く…子どもだな、お前は」


軽く握った拳をその口元に当てて、比奈伎は―――微笑ったんだ。





俺の前では、いつも深く刻まれている眉間の、それ
眉間の、しわってヤツだ





いつも、必ずある『それ』



『それ』一つがないだけで

















…可愛いじゃねえかと思う俺は…


もう末期か?










●戻●